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2007年9月

小説 火星よりI(アイ)をこめて

「宇宙航行許可証の確認終了です!お気をつけて良い宇宙の旅を!」

「ありがとう。」

英一は、ホワイト・ロック・エンジェルの窓から、大きく手をふった。そして、HRA号は、静かに推進剤を吐き出して、宇宙ステーションから離れていった。

シュッー、シュッ

星屑と漆黒の闇の間で、HRA号は、ゆっくりと弧を描くように進んでいく。

そして、HRA号の目指す先には、大きな赤い荒野と人類の第二の居住権惑星 「火星」が ひっそりとかつ雄大な姿で彼らの到着を待っていた。

「翔子・・・・俺は、とうとうここまでこれた。やれたんだ!」

英一は、これまでの自分の人生を振り返っては、誰もいない船内で呟いていた。

「宇宙飛行士になりたいの?数学もできないのに?」

「馬鹿にするなよ。俺はこれでも数Ⅲまで習ったんだぞ!」

「自慢じゃないね。それ。結局私立で落ち着いたんでしょ。」

「だって五科目なんてできないし・・・・」

「いいわけは止めなさい。見苦しい。」

「でも、俺は宇宙飛行士の夢をあきらめられない。だから、見守ってくれ!」

「とりあえず、就職はしてね。それじゃないと結婚してあげない!」

「し、翔子ぉ~~~」

妻翔子との甘い蜜月の日々が英一の脳裏に駆け巡り、思わず目頭が熱くなるのを実感していた。

「俺が・・・・・こんなになれたのも、翔子が見捨ててくれなかったおかげだ。大好きだよ・・・」

持ってきた写真は、涙でぐしゃぐしゃに汚れていた。

しかし・・・・彼は、まだ気づいていなかった。

彼が向かう火星では、今、とんでもないことが起こっていたということに・・・・・・・

続く・・・・・かも?

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小説 そしてショパンを探す旅へ 二章

薄暗いレストランの店内は、大人の社交場として程よく賑やかで、程よく静かであった。店内の片隅では、ピアノの音色が、人々に仕事の後の心地よいくつろぎと安らぎを与えていった。

「いい曲だね。なんていう曲なの?」

「さあ?俺ピアノよく分からないし。」

男は女の問いに即答で答えた。

「夜想曲(ノクターン) 第2番ですよ。」

ピアノを黙々と弾いていた青年が、そっと彼らに呟いた。彼の身なりは、この店に相応しくない小汚い格好をしていた。

「ねえ、龍也もピアノ弾けないの?男がピアノ弾けるのってかっこよくない?」

「さあ・・・・・そんな暇ねぇよ。やることたくさんあるしな。」

龍也と呼ばれた青年は、さっきから携帯電話の液晶から目を外すことはなかった。

「チッ!納期を先延ばしにしやがって!あのパーツを作るのに一ヶ月以上もかけてるなよ!」

「何の話?仕事?」

「ま、そんなとこかな。それよりもう出ようか?ホテル予約してるだよ。」

「え?ホント!?いこいこ!」

女は龍也の腕にしがみ付いた。

「あ、曲名教えてくれてありがとな。ショパンだっけ?」

「ええ。そうです。」

ピアノを弾いていた青年は、弾きながら龍也に顔を向けた。

「あなたは、もう、後戻りはできないのですか?」

「!?」

龍也は、その言葉を聞いた瞬間、体が硬直するのを感じていた。

「なっ!」

だが、青年は、それっきり龍也の顔を二度と見ることなく、夜想曲を引き続けた。

龍也は、店を、出て行った。

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小説 レジスタンス オブ ホスト 2

「なんじゃこりゃ?何の兵器の設計図だよ。こりゃ」

吉田はメイダラ重工業の地下工場で一人うめいた。彼の眼前ではオートで次々と戦闘機の部品がベルトコンベアの上で生まれていった。

「F-1398Rの部品にしてはおかしいな?揚力を発生するような形状をしてないぞ?」

設計図には、ロボットのアームのようなイラストが詳細に描かれているだけであった。

「さあな。俺達はやることをやるだけさ。上がいったことに意義を唱える権限はないさ。」

津島は、安全第一と書かれた黄色のヘルメットをかぶりなおした。

「死の商人は何をやっても日陰者さ。わかるだろ?」

「ああ。人には言えないことを死ぬ気でやってるんだものな。家族にはほんとのことはいってないし。」

吉田は24時間フル稼働している作業ロボットを見下していった。

「うちの工場では、この部分だけを作ればいいんだな?」

「そうらしい。他のパーツのことは知らんし教えてはくれないだろ?」

「注文をしてきたやつはどんな感じだったんだ?」

「ン・・・・」

吉田の言葉に、津島は言葉を切った。考え込んでいる様子であった。

「どうした?アッチ系だったのか?」

「いやな・・・・・変なんだよ・・」

「変?」

「どうみてもあれはガキだった・・・・・」

「ガキ?」

「ああ・・・・・大学も出ていないような頭の悪そうな男でな。ネクタイもろくにしてない状態でうちの工場長と話していたっけ・・・・」

「・・・・・・」

「あれは・・・・まるで・・・・・・・」

津島は、顎に置いた手を離していった。

「ホスト・・・・・・・だな。」

無機質で冷徹なマシーンが奏でる音は、工場の建物の中で永遠に続いていくようなリズムを刻んでいく。

たとえソフトである人間が死に絶えたとしても・・・・・

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小説 レジスタンス オブ ホスト

「龍也、どこ行くの?こっちに来て飲もうよ!。」

「ごめんね。ちょっと他のテーブル周らなくちゃいけないんだ。またね。」

軽く龍也は手を振った。

賑わう店内を見回し、龍也はお目当ての客がいるのを確認すると、そっとその席の近くに寄った。

「山田草子様、これはこれは来店ありがとうございます。」

「他人行儀の挨拶なんて聞きたくないわね。こっちに来てよ。龍也。」

「はい。かしこまりました。」

龍也の目配せで、他のホストの男達は、一人、また一人ソファーからいなくなっていった。

「・・・・・・今日は大事な話があるんでしょ?お酒は頼まなくていいのね?」

「ええ。ぜひ草子様にしかできないことでして・・・・・例の件大丈夫でしょうか?」

「それは話をつけてあるわよ。私の知り合いにはそうゆう系の人間も多いし、融資は最大限してあげるわ。」

「本当ですか?」

龍也の額にしわが寄る。

「ホスト経営だけじゃ資金が足りないんでしょ?」

「ええ。自分の給料はすべてそっちに回していますから。会計士の監査もある程度は誤魔化せます・・・・」

龍也はあたりを必死に警戒していた。

「私はアンタが気に入ったから融資の話にのったの。アンタじゃなきゃとっくに断っているわ。」

「でも、後々草子様には迷惑がかかります。その時はあなたとのつながりを悟られないように工作します。安心してください。」

龍也は草子の皺くちゃの手をしっかりと握り締めた。その手は微かに震えていた。

「・・・・・・」

「迷惑はかけませんよ。そして、僕は・・・・・」

唾をゆっくりと飲み込んでから、龍也は草子の耳元で

「死にませんから・・・」

確かに、そう、言い放った。

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小説 そしてショパンを探す旅へ

「ピアノを弾かせてもらえないでしょうか?一曲だけでいいのです。」

その男は、突然私の店のアルバイトに、そう告げた。店にある大きなグランドピアノを見つけたのだろう。彼は、シミで汚れたジャケットとボロボロのジーンズを引っさげて、格式高い当店に土足で上がろうとしたのだ。

「お客様、どうかなさいましたか?」

私は、招かれざる客の相手をしなければならなくなった。

「あの・・・・・・もしよろしければあのピアノで何か曲でも弾きましょうか?今は誰も弾いてないように見えますし・・・・」

男は帽子を胸に当て頭をたれて、私に懇願した。

「いや、今日は契約している演奏家が休みでしてね、本日の演奏はすべて中止しているんですよ。残念ですか・・・・」

私は、もう男の姿を直視するのは辞めにしようとした。だが男は私の話が終わる前に、歩き始めていた。

「ちょ、ちょっと!」

彼は、まっすぐ店の中央に鎮座しているグランドピアノに向かい、店で食事をしていた富裕層たちの視界に入り始めていた。

「誰か警備会社へホットラインをつなげ!不審者が我が店内に侵入したと報告するんだ!」

店内が徐々に異様な空気に変わり始める中、男はその周りの人々の視線を気にするそぶりを見せず、ゆっくりと鍵盤に指を滑り込ませていた。

「♪、♪♪、♪♪♪、♪」

男の指から、みずみずしいピアノの音色と旋律が溢れ出すと、さっきまで騒いでいた人々の会話も徐々に消えていった。

フレデリック・ショパン 作曲 「別れの曲

ただただ私は、彼を捕まえる事も忘れ、その曲の旋律の海へ埋没していく自分の感覚に襲われていった。

「・・・・・・・・・」

すべては、彼のピアノの音色だけであった。

「あいつは、あいつはどこへ行った?」

私は、彼の演奏が終わったあと、誰もいないグランドピアノを見つめていた。

拍手は、鳴り止みそうになかった。

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