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2007年7月

小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 参十

F9a62597_240_3イラスト/小日向そら

主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

「どうして・・・・・あなたが・・・・・こんなふうに・・・・なって・・・・」

父と娘の記憶が、ラインの頭を駆け巡り、過去の記憶が映像となってラインの脳神経と連動した。

ヤマガタは、赤く染まった制服の胸ポケットから、何かを取り出した。

「あ・・・・・・香奈子・・・・・・香奈子・・・・・・」

お守り代わりに持ってきたのだろうか、ヤマガタは胸ポケットからボロボロの娘の写真を取り出した。

「ごめん・・・・・正月までには帰れそうにないよ・・・・・すまんな・・・・・母さんと2人でこれからちゃんと生きるんだぞ・・・・・遺族年金は・・・・お前のものだ・・・・彼を大事に・・・・するんだ・・・・ぞ・・・」

手が、ゆっくりと、下に、落ちる。

そして、彼の人生は、今、終わりを告げた。

ラインは、自分のしたことをかみ締めながら、泣いた。

そして、彼は、床に落ちた写真を、じぶんのポケットにそっと、しまった。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 弐十九

F9a62597_240_3イラスト/小日向そら

主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

『徴兵の用紙、市役所から届いたんだって?いついくの?』

少女は、携帯電話を片手に父親に聞いた。

『八月のあたまかな。会社を休すむことになりそうだな。』

『ふーん。』

男はスーツを壁にかけた。

『生活のことは心配しなくていい。母さんと2人でやっていけるくらいの貯蓄もあるし、年金だって政府から支給される。』

『そっか。そうなんだ。』

『お前は今のまま、大学受験だけを頑張ればいいんだ。世の中のことは考えなくて良い。』

『そう。』

男は、居間にあった新聞を広げ始めた。見出しには、日本を中心としたアジア連合軍が、ヨーロッパに宣戦布告、という文字が並んでいる。

『いつ、帰ってくるの?』

新聞をめくっていた指が、一瞬、止まった。

『・・・・・・・・・・正月までには・・・・・帰ってくる・・・・・』

男の声は、少し震えていた。

『私の彼氏、半年前に行ったよ。まだ帰ってこないの。』

その言葉を聞いて、ヤマガタは思わず顔を上げた。

そこには、大粒の涙を目一杯にためた娘が、確かにいた。

『か、香奈子・・・・・・・どうしたんだ・・・・?』

『人が死んじゃうってことはさ、この世界から消えるってことよね?それを考えたら、物凄く怖くなっちゃって・・・・・』

娘の震える手を、ヤマガタは、必死に掴んだ。

「大丈夫。戦争は長くはつづかない。正月までには家に帰るよ。そしたら、お前の彼氏を家に連れて来い。みんなでおせちやお雑煮を食べよう。」

香奈子は、黙って何度も頷いた。

ラインは、目から涙が溢れてくるのを、止めることができなかった。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 弐十八

F9a62597_240_3イラスト/小日向そら

主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

「なんでRPGを撃たない!?せ、せっかく時間稼ぎをしていたのに・・・」

「だ、だってここで撃ったらここにいる全員が・・・・」

「上官の命令に逆らうのか!」

ヤマガタは、後ろでロケット砲を構えていた仕官を拳銃で撃った。ゴトッという鈍い音が聞こえた。

『そうか・・・・・そうだったのか・・・・・』

もはや目の前のラインに眼もくれず、弱い立場の人間に責任転嫁しようとしているヤマガタの醜悪な姿を目撃して、ラインは怒りを自分の力に転化させていった。

「RPG弾を食らって死ね!この売国奴が!」

「遅いんだよ!あんたら普通の人間のレベルじゃ!」

ラインは、ヤマガタがロケット砲を肩に持った刹那、彼の心臓に指を滑り込ませていた

チン!

ラインの脳で、何かか弾ける音がした。そして次の瞬間に、彼の中に少女と父親のイメージが雪崩れ込んできた。

『・・・・・・何だ・・・?父娘(おやこ)・・・・?』

それは、目の前で血を吐き続けているヤマガタにそっくりな男であった。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 弐十七

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

「そうか・・・・・部下がすまないことをしたな・・・・・しかし私には、サンブックに妻子もいる。ここで君に殺されるわけにはいかないな。」

「・・・知ったことか。」

ラインは、拳を高く上げた。

「・・・・・いいのか・・・?君は我々を殺したら、どうなるかわからないのか?君は国家連合の反逆の大罪を犯そうとしているのだよ?」

ヤマガタの額に汗がにじみ出ていた。

「お前らを殺して、俺は軍を抜ける。それでサンブックにも帰らずひとりで生きていくよ。」

「できるはずがない。お前には、生身の人間を殺せるはずがない。君のデータは我々は知っているのだよ?」

「・・・・・・・そうか・・・・・・でも人間は時がたてば、変わるものだから・・・・」

「ちょ・・・・待て!話せばわかる!」

「問答無用!」

ラインの脳裏には、昔読んだ歴史の教科書の青年将校の言葉がフラッシュバックしていた。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 弐十六

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

苦悶の表情を浮かべ悶絶するエイダスナーの横で、毅然とラインを見つめるショウ・ヤマガタ少将の眼は、ラインに動揺と畏敬の念を同時に与えた。

『なんだ・・・・・?窮地に陥っているのになんでこんなにも涼しい顔をしていられるんだ?』

ラインは、目の前の老人が、ただの老兵ではないことを一瞬で悟った。

「・・・話だと?俺はお前たちと話すことなどないが?」

ラインは、動揺を悟られないように、ゆっくりと言葉を絞りだした。

ヤマガタは、ラインから視線をすらすそぶりも見せず、顔の煤をぬぐう気配もなかった。

「いいや、話せばわかるよ。君だって元々はアジア連合軍兵士だったのだろ?我々と同じサンブックの人間だろ?」

老人は、口元に笑みが現れ始めた。

「だから・・・・・戦うことはないと?」

「そうだ。同じ故郷のもの同士、争うことはない。君にだって待っている家族や恋人くらいいるだろう?」

最後の言葉が余計であった。

「死んだよ。あんたたちに殺された。だから俺は、お前たちを殺す!それで十分だ!」

ラインは、右手に力をこめ始めた。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 弐十伍

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

獣のような唸り声をあげて、エイダスナーは痛みと恐怖と苦しみの中で、黙ってラインを凝視する以外にもはや、何もすることはできなかった。

「・・・・・セシルが受けた拷問の苦痛や恐怖は、こんなもんじゃないんだ!!」

ラインは、かつての温厚で優しい彼ではなくなっていた。

「知るか!!俺はそんなこと命令しちゃあいないぞお!!部下が勝手にやったんだ!俺は何も知らないんだよおおおお!」

エイダスナーの吐き捨てるような言動は、ラインの神経を逆撫でするのに十分であった。ラインの拳は、すばやい動きでエイダスナーの頬に吸い込まれていった。

バチーンン!!

「それが、そんな言い訳が通用するとでも本気で考えているのか!?お前らが軍隊の上級職の地位にいるのに、部下のやったことも関知していない、できないほどお前は無能なのか!?組織の中枢にいる人間が知らないの一言でで済ませられるとでも思ったか!」

その時、操縦席のうしろで、何かが動く気配がした。人影が、こっちに近づいてくるのがラインには理解できた。

とっさにラインは、エイダスナーを殴っていた手を、防御のために、引っ込めた。

「・・・・話なら、私が聞いてやる。」

ショウ・ヤマガタ少将の顔は、埃と煤で真っ黒に変色していた。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 弐十四

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

ズキューン!

一瞬の静寂が世界を包み、銃声と硝煙の匂いがヘリの中を漂う。エイダスナーは胸ポケットに隠し持っていた拳銃をラインに向けて発砲した。

「馬鹿が!」

唾を吐き捨て、エイダスナーはうめいた。目の前では、眼を白黒させて、微動だにしないラインの姿があった。

「油断したお前が悪い。恨むなよ。」

エイダスナーは、拳銃を胸ポケットに仕舞い込もうとゆっくりと、腕を下ろそうとした。

「お前もな。」

ラインは、にやりと笑った。

その刹那、エイダスナーの右腕は、操り人形のように力が抜けたように折れ曲がり、しばらくして、エイダスナーの絶叫の声が、ヘリの中を駆け巡った。

「ギッ、グッアアアアアアアア!!!」

「拳銃の弾が当たるわけないだろ。今の俺にはな。」

ラインの右手の手のひらから、ゆっくりと銃弾が零れ落ちる。

「お前・・・お前・・・・お前・・・・・オマエ!!!」

狂ったようにエイダスナーは連呼した。

「日本語を喋れよ。大の大人がみっともないぜ?」

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 弐十参

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

それは、ロボット兵士と交戦中のシンたち機甲戦車分隊の真上に現れた。

「何だ?援軍か?」

太陽を背にして、一機の軍用ヘリが彼らの視界に突然割り込んできた。

「・・・・・・ンッ・・・・・ヘリと人影?」

ローターを高速回転させて高度をとっていたヘリの横には、人の形をした物が、ぴったりくっついているように見えた。

「逃げるのが遅かったな!」

ラインは、ヘリのちょうど足場にあたる鉄棒に手を引っ掛けて、空中にぶら下がっている形になっていた。

「振り落とせ!早くしないと味方に気づかれるぞ!」

エイダスナーは青筋を額に浮かび上がらせて、操縦席の兵士に怒鳴り散らした。

「慌てるなよ。もうすでにあんたらの計画は頓挫してるんだからな。よっと。」

逆上がりするような感じで、ラインはヘリの扉をいとも簡単に打ち破った。

ドゴォーン!

「ヒッ!」

扉は、竜のオトシゴのように曲がりくねり、指一本で、簡単に下へ落下して言った。

「何を驚いてる?お前が俺をこんな風にしろと部下に指示したんじゃないのか?」

エイダスナーは口から泡を吹き始めていた。

「皮肉なもんだな。敵のロボット兵士を倒すために技術の水位を決して作った新兵器が、自分たちの命を奪う結果につながるとはな・・・」

ヘリは、すでに空中でローターを回転させたまま、微動だにせぬまま、浮くことしかできなかった・・・・

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 弐十弐

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

ラインは、ゆっくりと軍用ヘリに向かって歩き始めた。その瞳には、もはや理屈や情けなど微塵もなく、ただ、純粋に、自分のやるべきことを見据えたように澄み切っていたのだった。

「お前たちのおかげで、俺は一個中隊に匹敵する力を得た。それは感謝するよ。」

拳に憎しみの力が注入されていく。

「早く!あいつを何とかしろ!味方の兵士は何で応戦しないのか!あいつら全員軍法会議ものだぞ!」

エイダスナーやヤマガタ少将の乗ったヘリは、発射シークエンスに突入していた。

「復讐が正しいとは思わないが、お前らが基地内部の味方を見捨てて逃げだす蛮行を無視できないからな・・・」

ラインは、サイレン音のなる中、ヘリのすぐ隣にすんなりと移動した。

「!!」

「思ったより時間かかるんだな・・・・発射するまで・・・」

その瞬間、ヘリとラインの体は、同時に軌道エレベーターの力で、地上まで押し上げられた。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 弐十一

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

その時、エイダスナーは軍用ヘリの副操縦席から、それを見た。

「!?」

それは、自動ロックしてある格納庫の扉が、轟音とともに、紙切れのように吹き飛んでいく様を。そして、その現象は爆弾や武器によるものではなく、人の四肢が起こしたことであったことを、彼は、しばらくして理解するのであった。

「敵襲か!早くヘリをリフト面へ着地させろ!」

「は、はい!」

軍用ヘリはローターを高速回転させて、軌道エレベーターのリフト面へ緊急着陸に成功した。

「残念だったな。もうこれで我々は地上までエレベーターで上がるだけ・・・」

「どこへ・・・・行くんだ?」

エイダスナーは、男の低く重い言葉が、自分の心臓を叩くような感触に襲われて、思わずヘリの窓の外をのぞいた。

「・・・・・・・あっ・・・・・あああ・・・・・・」

広い格納庫の真ん中に、男が一人、こちらをじっと睨んだまま、動かずに立っていた。男は童顔で髪の毛は金髪に染まり、腕や足には拷問の生傷が刻まれ、目は、復讐の炎で埋め尽くされていた。

「待っていた・・・・・この時を・・・・・お前たちが・・・・・一箇所に集まるこの時をな・・・・」

ラインは、扉を打ち破った拳に、さらに力をこめ始めていた。恋人を親友を奪ったすべての憎しみを、すべてを今、ぶつける対象を、彼は見つけたのだ!

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 弐十

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

第四格納庫に静寂という霜が降りると、エイダスナーは足早にその場にいた一人に、合図を行った。

「格納庫のすべてのドアを自動ロックしして、我々が軌道エレベーターのリフトに移動したあとに時限爆弾の起動規制を解除するんだぞ?タイミングを間違えるな・・・・・我々が逃げ出す前に作動する事の内容にな・・・」

エイダスナーは物凄く小さな声で部下の耳に声をあてた。

男は、静かに首を縦に振る。

エイダスナーは小さく微笑むと、ヘリの副操縦席のドアをゆっくりと開け、操縦席に座っているパイロットに目で合図をした。

「軍用ヘリ119号機、移動開始。軌道エレベーターのリフト区域に速やかに着陸し、約5分後に地上まで押し上げられます。そのあとは、脱出ルートを確認後、速やかにアジア連合軍広東基地を離脱します。エイダスナー大佐、許可を。」

「許可する。ショウ・ヤマガタ少将ら将官たちは後ろのコンテナにいる。運転はなるべく慎重にな・・・」

エイダスナーは、シートベルトをきつくからだに巻きつけた。

「味方をだますことこそ、敵に悟られない唯一の戦術だからな・・・・」

部下たちは、今だ、彼ら上層部の意図を理解せぬまま、無為な戦いを続け、命を落としていった。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 十仇

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

「物資運搬を急がせろ!この軍用ヘリは、アジア連合軍 堪国基地との連絡をとるための偵察兼輸送機なんだ!準備に手間取っているのはなぜか?」

基地の地上付近にあたる第四格納庫のデッキには、エイダスナー大佐が敵襲で慌てている兵士たちを一喝した。

「何をやっているか!コンテナはあれほ大事に運搬しろといったじゃないか!空気穴だと?当たり前だ!酸素を取り入れなければ食料は腐ってしまうぞ!」

ヘリの後方ハッチには、機械とヒトの手で、灰色のコンテナが次々と収納されていった。大きさで言うと、ヒト2人が体育座りで入れるぐらいのスペースである。

「大佐、武器と食料はすべてヘリに運び終わりました。」

「予定時間を少し遅れたか・・・・・まあいい。」

エイダスナーは腕に巻いてある時計を一瞥した。

「では、2、3人を残してその他のメンバーは基地防衛にあたってくれ。敵の陸戦部隊が基地内部に進入しているからな!」

「ハッ?」

「聞こえなかったのか?お前も早く武器を持って戦え!解ったな。」

「了解しました!」

エイダスナーは、格納庫に人がいなくなるのを確認するまで、一歩もその場を動くことはなかった。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 十八

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

基地の地下最深部にあるアジア連合軍広東基地司令室に通じる通路では、敵の陸戦部隊と基地守備隊との激しい攻防戦が繰り広げられていた。

仲国軍陸戦部隊は、事前にスパイなどにより広東基地内部の情報を把握しており、基地の脆弱な部分を攻める戦術を取っていたため、それほど彼ら側の犠牲者は少なかった。

基地守備隊員は、敵が自分たちも知らないような場所から現れて攻撃を仕掛けてくることに戸惑いと恐怖を覚え、満足に応戦もできぬまま、敵の銃弾の雨嵐の中で、倒れて言った。

シースたち情報収集先遣隊は、ようやく陸戦部隊と合流を果すと、彼らに更新された新たな情報を伝えていた。

「司令室には誰もいないわ。管制室にもね。彼らはこの基地を放棄する気なのよ」

「この基地をそんなに早く明け渡す気なのか?やつらは。」

「もちろんタダじゃないわ。時限爆弾の置き土産を置いてね。」

「時限爆弾!?」

「威力はTNTやクラスター爆弾の2倍以上と考えて良いな。基地地下に10箇所以上仕掛けられているらしい。」

「!本当か!?」

「我々はまんまと誘い込まれたということさ・・・・」

「どうりで基地内部に簡単に入り込めたわけだ・・・・・くそっ!」

シースたちは、銃声が鳴り止んだあと、四散した基地守備隊の肢体の間を進んで、司令室のドアを開けた。

「本当だ・・・・やっこさんたち、夜逃げのあとじゃねぇか・・・・」

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 十七

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

「隊長!上層部の指示は、新しい命令は来ているのでありますか?このままじゃ全員各個撃破されてしまいます!」

「大丈夫だ!今、エイダスナー大佐と回線をつないでいるところだ!心配するな!敵の中心にレールガンをぶち込んで敵のフォーメーションを分断すればいいんだ。わかったな?」

「りょ・・・・了解。」

シンは、そういって無線をきった。

リドックは、敵の陸戦部隊の基地進入が、もうすでに成功しているのではないかという懸念を払拭できずにいた。

「・・・・・・陽動と各個撃破を繰り返しているのか・・・・・味方の戦闘バイクの動きもつかめない・・・・・上層部は何をしているんだ!基地司令部との連絡は?」

リドックの足元で、ヘッドホンを片手にライナードが必死でコールを呼びかけていたが、誰かと話しをしている様子はなかった。

その間にもロボット兵士の攻撃が、味方の戦車の装甲部分に集中し、爆発する戦車も現れ始めると、今まで高かった兵士の士気も徐々に落ち始めてくるのだった。

「駄目です!何の応答もありません!司令部には誰もいないということでしょうか?」

「まさか・・・・敵の陸戦部隊が制圧したのか・・・ライナード!戦車を後退しろ!基地司令部に直接命令を聞きにいくんだ。」

「え?」

「いいからこの戦車を後退するんだ!」

「は、はい!」

ライナードは、ギアチェンジをするため、操縦席の横のレーバーを強く後ろにねじ込んだ。

「こうゆう一連の動作は、車と同じなんだな・・・」

リドックは、子供のような感想を口にした。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 十六

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル)

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

銃を持った男たちは、基地攻略作戦を成功させるため、どこかへ姿を消してしまった。

その場に残ったラインとシースは、薄暗い通路にたたずんでいた。

「お前はリドックの元へ行かないのか?好きなんだろ?一緒に・・・」

ラインは、シースの瞳の色をじっと見つめた。

「私は・・・・・・もういいの・・・・・・・」

シースは目を伏せた。

「私には、彼を助けるだけの力も自由もないから・・・・・」

シースは、ラインに背を向けるとその場を去っていった。

「俺は、依存心が強く、環境や時代に流されているだけの女なんか嫌いだ。」

ラインの拳は、憎しみと怒りと悲しみで震えていた。

「リドック!俺は、決着をつけるぞ!お前とお前を変えた環境にな!」

「シン!そちらの戦局はどうなっている?ロボット兵士の数は?」

リドックは、戦車内部の天井に吊るされていたアナクロな無線機に向かって怒鳴っていた。

「駄目です!部下が敵の各個撃破戦術の術中にはまって・・・・・・2機やられました・・・・・・こっちは戦車三機で応戦中です!」

シンの不安と恐怖と怒りが混ざり合った肉声が、リドックをさらにいらだ出せていた・・・

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 十伍

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

「正確にはガーナディアンのリーダーをやっていた。お前たちの持っている端末を使って、俺の名前で検索すれば証明できるはずだが?」

男は、ボロボロのズボンのポケットから、小型のパーソナルコンピューターを取り出すと、おぼつかない手つきでキーを叩き始めた。

「間違いない・・・・シースの言っていることは本当だったのか・・・」

男は目を丸くして、小さな液晶画面を見つめていた。

「でも何で、あなたはこの基地にいるの?」

「うちの仲間のひとりが捕まって・・・それを助けに来て・・・・・」

ラインは言葉を言い終わる前に黙って下を向いた。

「どうかした・・・?」

「いや・・・・・俺は指揮官として無能だと改めて実感したのさ。それだけのことだ。」

「・・・・・?・・・・・」

「ほっとけよ、シース。それより仲国軍陸戦部隊の支援に向かうぞ。どうやら中央管制室を発見したらしい。これでこの基地も終わりだな。」

男は、自動小銃の弾を手で転がすと、それを勢いよく指で弾いて地面に落とした。

「でも・・・・・・・」

「まだこの軍に未練があるのかよ?そのリドックとかいう青年佐官がよほど気に入ったのか?」

シースは、黙ってラインの車椅子に近づいた。

「・・・・・・」

「ええ・・・・・・彼を愛してるかも・・・・・ね・・・」

シースは、針金とナイフを使って、ラインの足かせと手錠を外した。

「あの人を助けてね・・・・・・友達なんでしょ?あなた・・・・」

「昔は、親友だったよ・・・・・学生の頃さ・・・」

ラインは、汗でべたついた手をさすりながら、小さく笑った。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 十四

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

「・・・もういい。お前は何も悪くない。自分を責めるな。」

肩を落として、全身を震わせながら泣いているシースの横を、一人の男が通り過ぎた。ラインは、シースの突然の号泣や男の出現に戸惑い、自分の置かれている状況が掴めずに、逃げ出す機会を失っていた。

「お前がこの基地にスパイとして情報収集してくれたおかげで、我々はこの基地に潜入できたんだ。そう泣くなって・・・」

男の外見は大きく、腕もラインの太股と同じで、肩に自動小銃を引っ掛け、ボロボロの制服の隙間には、手榴弾が何個もぶら下がっていた。彼はサンブック人のような顔をしていたが、どこが微妙に違うような気もした。

「違うの・・・・違うの・・・・・彼が・・・・・彼が・・・・」

「ああ・・・・・彼らは一生懸命外で戦っているよ・・・・・何も知らずにな・・・」

「彼らは捨て駒なのよ!時間稼ぎのために命を懸けて・・・・」

「我々はこの基地を制圧すればいいだけだ。彼らに同情している時間はない。今地下の管制室と司令室を占拠しているが、上層部の連中の行方はつかめていない・・・・早くしないと・・・」

「でもっ!でもっ!・・・・・・ねえ・・・・あなた・・・・リドックって言う佐官を知ってる?」

女は、傍にいた男から離れて、ラインによってきた。

「・・・・・・それがどうしたんだ?」

「知ってるのね?あの人に伝えて!上層部はあなたたちを見捨てて基地を放棄し、本国に逃げるって。」

「何だと?何でそんなこと知ってるんだ?お前たちは何者だ?」

「そんなことはなしている余裕はないの!早く彼に伝えて、ここから脱出してって・・・・じゃないと・・・・」

女は、そこまで言いかけて男に口をふさがれた。

「何でこんな男にしゃべるんだ。彼はアジア連合軍サンブック兵士だぞ!」

「違うわ。彼はガーナディアンのメンバーよ。」

「ホントか?」

ラインは、静かにうなずいた。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 十参

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

ラインは、車椅子の越しに基地の内部をつぶさに観察していた。それは、自分が置かれた状況を常に把握し、隙あらば脱出しようとする意思の表れでもある。

『・・・・何か様子が変だな・・・?俺の護送にもこの女性仕官1名しか寄こさないし・・・・この基地で何かあったのか・・?』

通路ですれ違う人たちは、ラインたちには目もくれず、武器や弾薬、食料を抱えて、走り回っていた。

シースは、彼と一言も話もせずに、人気のない場所へ車椅子を押していった。彼は、自分の乗った車椅子が、地下へ通じるエレベーターの場所へ向かっていないことをうすうす気がつき始めていた。

『この女・・・・・何をする気だ・・・・?』

妖艶な容姿とラズベリーの香りを漂わせた彼女の雰囲気は、おとぎ話に出てくる男を色気で惑わす妖怪に見えた。

「・・・・・・・・」

彼女は、車椅子を押すのをやめ、ハンドルから手を放した。彼らは、薄暗い廃屋のような場所へいつの間にか来てしまっていた。

彼女は、ラインの正面にたつと、彼の目を見て言った。

「リドックを・・・・・・助けてやって・・・・・・あの人に人殺しを止めさせて・・・」

彼女の目からは、大粒の涙が零れ落ちた。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 十弐

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

一方その頃ラインは、リドックの部隊に敗れたあと、彼の手によって基地にある医療所へ移され治療を施された。彼が治療を受けられたのは軍の慈悲や情けによるものではなく、彼が新兵器開発実験体の唯一の生存者であり、成功例に過ぎなかったからである。

医療所の一室に半ば監禁されたラインは、窓の外で繰り広げられている人間たちの阿鼻叫喚の様子をじっと見つめながら、軽く息を吐いた。

『俺がまだ生きていられるのは、まだ利用価値があるってことか・・・』

手と足には、セラミック製の拘束具がはめられ、彼の力を封じ込めていた。

「ン・・・・足音が聞こえる・・・・誰か来るのか・・・?」

コツン、コツンという音とともに、医務室のドアがさっと開いた。

「お迎えに参りました。ラインさん。」

白い制服にスカートという軍人らしからぬ風貌と共に、金髪の女性仕官が、空の車椅子を押してラインの医務室へ入ってきた。

「・・・・・・・」

「怖い顔をしないでください。あなたを死刑台に送るわけじゃないんですよ?」

ラインは、どこか男を惑わす彼女の外見に、警戒感をいっそう深めていった。

「自己紹介が遅れましたね。私はシース准尉と言います。あなたを安全な場所へ護送する任務を受けましてここに来ました。早く、この車椅子に乗ってください。」

「こんな状態でまともに俺に歩けと?」

「あなたの拘束具を外しても、私を殺さないという保障をしてくれますか?」

「・・・・・・」

「さ、ここも時期に敵の砲撃に合います。地下の安全な場所へ移りましょ。肩を貸してください。」

ラインは、黙って彼女のほうへ擦り寄った。彼女から発せられる甘いラズベリーの香水の香りが、ラインの本能を刺激し、判断能力を低下させていた。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 十壱

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主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

「EU軍のロボット兵士が、陽動作戦を展開中です。我々はその隙に基地の地下に通じる隠し専用通路から進入しましょう。おっと、くれぐれもサン・ブック兵士としてね・・・」

片言の男は、爆音と血や銃弾が混ざり合う戦場の中を、走り抜けた。後ろからは、アジア連合軍のサンブック士官用の制服を着た男たちが、足音ひとつ立てずに続いていった。

そして男は、今にも崩れそうなトタン屋根の家の前で足を止めると、入り口の前にかかっていた布を避けて家の中をのぞいた。

「・・・・・・んっ・・・・・・ここからは誰も来ていないな。大丈夫です。中に入りますよ?」

男たちの最後尾にも見えるよう合図を送ると、片言の男は、家の中に入り、居間に会ったちゃぶ台をひっくり返した。

「どうかしたか・・・?」

「いえ・・・・・確かこのあたりに地下階段の扉があったはず・・・」

「事前に確認していなかったのか?」

「悪く言わんでください。我々だって昔の仲間のことをすべて知っているわけではないのですよ?」

男は、床の木材を何枚かひっぺがえすと、その奥にコンクリートで固められた部分があるのを見つけ出した。

「ありました!アジア連合軍基地の隠し通路の扉です!」

男は、思わず大きな歓声を上げた。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 拾

F9a62597_240_3イラスト/小日向そら

主人公:左(リドック)右(ライン) ヒロイン:中央(セシル

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

リドック率いる第49機甲戦車部隊は、2手に分散し、扇状にフォーメーションを組んで、敵の攻撃に備えた。

敵のロボット兵士たちは、木と木の間を高速で移動しながら基地内部に銃弾を浴びせる形であったため、リドックたちの目には進入口を発見できずに攻めあぐねているように見えた。

「人間だけで構成された敵陸戦部隊は、我が基地周辺に侵入してきているという情報は入ったか?」

「まだです。無線機には何も。それより攻撃はいいのですか?」

ライナードは若干、肩の力が抜けたようだった。操縦だけでなく、計器や操縦の反応速度に余裕が生まれているのが解った。

「連中は戦車のレールガンの射程ギリギリの所で動き回って我らを誘うような動きをしているし・・・・・まったく」

リドックは、レールガンを無闇に発砲できない自分の立場を考えて、唇をゆがませた。

『俺みたいな地位の人間は、中途半端だな。下手に出世なんかするんじゃなかった・・・』

戦場は、一時期、こう着状態に陥った。

「おい!お前どこに行く!?なぜ敵に背を向ける?」

「ハッ、ワタシ、デスカ?」

アジア連合軍の制服を着た男は、自分がいきなり後ろから声をかけられてびっくりしていた。

「お前以外に誰に話しかけているんだよ。さっさと武器をもってロボット兵士を倒しにいけよ!」

「イエ、武器ガミアタラナイノデス、武器倉庫ハドコデスカ?」

「そんなはずあるか!!事前に配給されたやつをなぜ使わん!?」

「イエネ。サン・ブック製の奴は、モウツカワナイトキメタンデスヨ。」

「・・・・・・お前、さっきからなんで片言でしゃべって・・・」

「私らは、もうあなたたちとは、敵同士になったんです。」

片言の男は、すばやく腰のナイフを抜くと、目の前にいた男の首をえぐり取った。男は声をあげる事もなく、血の池の中に自分の体を預けて動かなくなった。

「皮膚の色が似ているからね。昔からサン・ブック人とよく間違われていたっけ。よく差別もされたっけ・・・・・同じ黄色人種なのにさ・・・・」

男は、両手をあげて、大きく円を描くポーズをとった。その合図と共に、草むらの中から、何十人もの男たちが、アジア連合軍基地に足を踏み入れたのだった。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 久

F9a62597_240_3イラスト/小日向そら

主人公:右(ライン)左(リドック) ヒロイン:中央(セシル

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

高速ローラーとガトリンク砲を装備したロボット兵士が、弾幕を張りつつアジア連合軍広東基地に迫る中、アジア連合軍陸戦部隊は、隠しゲートから次々と陸戦部隊を発進し、敵の侵攻に対応していた。

アジア連合軍広東基地の司令部は地下の奥深くに置かれ、地上部分は民家や物置場などで構成され、いわば目くらましのダミーとして、敵からの発見を困難なものとしていた。それは例え監視衛星からも地下の戦力の実数を確認することは困難であったため、戦術的に、アジア連合軍広東基地は、敵にとって厄介な存在であった。

銃弾が地上擦れ擦れを交錯する中、砂埃と大きな音を立てて、ゆっくりと大地が裂け始める。

そう、リドックたちのホバー戦車が隠しゲートから、地上にゆっくりと姿を現した。

「方位2時の方向が近いな。落ち着けよライナード・・・・まだ敵はこっちに気がついてないぞ。」

リドックは、戦車の上から頭を少し出すと、双眼鏡を片手に目で敵の位置を確認していた。

「隊長は・・・・隊長は怖くないんですか?」

ライナード伍長は操縦席から弱弱しい声を上げた。

「・・・・・そうだな。怖いという神経が麻痺して怖くなくなってしまったな。怖いというのは知識や経験が極端に少ない時に起こる人間の感情のひとつでしかないとどっかの本に書いてあったぞ?」

「はあ・・・」

「間抜けな返事を返すな。前をちゃんと向いていろ。いつでも回避運動をできるようにな。」

「りょ、了解。」

「シン、聞こえているか?お前たちのグループは、7時の方角の敵を迎撃せよ。我が隊10機のうち半分をそちらに回したんだ・・・・できないとはいわせないが?」

「やらなきゃ死ぬんでしょ?やりますよ。」

「ああ・・・・そうだな・・・死ぬな・・・」

「それに・・・あっ隊長!!ロボット兵士部隊を確認しました。これより交戦に入ります!!」

「わかった!幸運を祈る。」

「もし神様がいるなら、俺たち人間を救って見せろ!!」

シンは、無線機の奥から声を張り上げた。

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小説 戦いの向こう側へ 加速する世界 蜂

F9a62597_240_3イラスト/小日向そら

主人公:右(ライン)左(リドック) ヒロイン:中央(セシル

小説 戦いの向こう側へ 前回までのあらすじ

「第49機甲戦車部隊は、直ちに軌道エレベーターに戦車を移動し固定せよ。五分後とに地上へ射出する。直ちに第49機甲戦車部隊は・・・・」

格納庫のスピーカーから、引っ切り無しに各部隊への発信コールが流れていた。整備班たちは、軽量化されたホバー戦車の空気調節やリニアレールガンの電圧調節に躍起になっている。

「・・・・で我々の任務は、地上の2時と7時の方向から進行してくるEU軍製のロボット兵士、約300を迎撃・足止めすることだけだ。」

強化服とゴーグルとヘルメットを装着したリドックは、整列している隊員の前で、任務の最終確認を行っていた。

「各自隊長は万全か?よし、質問はある者は?」

リドックの目の前にいたシン曹長が、右手を上げた。

「シン曹長、何だ?」

「EU軍がこの基地まで侵攻してくるというのは、我が軍の防衛線を突破してきたということですか?」

「ああ・・・そうだ・・・」

「そうなると万が一負けて、この基地を放棄した場合、サン・ブックへの侵攻は早くなりますよね?」

「アジア連合軍最終防衛ラインは、堪国にある。心配は要らないさ。」

リドックは、シンの肩を抱くとやさしい微笑を浮かべた。

「シン、みんな、俺たちがここで勝利すれば、サン・ブックの街を戦火に巻き込むことはない・・・・俺たちの後ろには平和に暮らしている家族や故郷がある!それを忘れないでくれ!各員、戦車へ搭乗用意!」

「了解!」

三々五々、隊員たちは戦車へ乗り込むと、軌道エレベーターの台座に進路を変えた。

『結局、今は俺にできることをやるしかない。生き残るためには、この基地を死守する以外に考えようがない。他人や運命の性にしたいのは山々だが、周りのせいにしたところで、俺の人生は良い方向に転がるわけじゃないしな・・・』

リドックは、ホバー戦車「雷神」の操縦をオートに切り替えると、梯子を上り戦車の上部にあるレールガンなどの武器管制を確認していた。リドックの足元では、新兵として最近配属されたライナード伍長が、マニュアルを見ながら震える手つきで、戦車の速度や空気圧のメモリを確認している最中であった。

『この戦車は2人乗りだから死ぬときは淋しくないか・・・・』

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